相続税の計算は複雑
亡くなった人、いわゆる被相続人が土地などの不動産を所有していた場合には、相続人となった人が、その価値に応じて相続税を支払う必要があります。一般の土地は、税務署で公表している路線価図にしたがって、土地の価額を計算することができますが、目下、区画整理が施行されている途中の土地の場合には、定の範囲を施行区域として定めて、その範の所有権などの権利を、事業計画にしたがって、別の場所にある土地に割り振ったり、従来からある建物を取り壊して建て替えをしたり、建物を基礎から外して新しい土地まで引っ張って移動させたりするなどの工事や手続きを行います。このような事業を通じて、区域内の土地の持ち主が少しずつ土地を提供し合うことによって、区域内の曲がりくねった狭い道路を直線的で広い幅員をもつ道路として整備したり、これまでにはなかった公園などの都市施設を新設したりして、居住環境をより良いものにします。
しかし、事業は長いものになると数十年単位になってしまうことも珍しくはありません。そこで、通常は従前の土地に対する仮換地とよばれる代替の土地をいったん指定して、事業がすべて終了したあとで、仮換地を正式な換地として地番を付与し、所有権などの権利を従前の土地から完全に移行させることになります。仮換地が指定された場合には、従前の土地は持ち主が自由に使うことができなくなり、これを使用収益の停止と呼んでいます。反対に、仮換地が利用できる状態になることを、使用収益の開始と呼びます。
この仮換地の状態のときに相続が発生した場合ですが、基本的に、課税対象となる宅地の価額は、従前の土地の評価を利用するのではなく、仮換地のほうの評価を利用する決まりになっています。ただし、仮換地の造成工事が進行中で、工事の完了までに1年を超える期間がかかることが見込まれている場合には、いくら税金とはいっても、ただちに仮換地の評価による価額をあてはめることは適当ではありません。そのため、相続税の申告にあたっては、いったん仮換地の工事が完了したあとの土地の評価を、路線価方式か倍率方式のどちらかで算出した上で、価額の95パーセントにあたる金額として評価することになっています。
換地処分
また、事業が終了して正式に換地が行われることを換地処分と呼んでいますが、この換地処分にあたっては、従前地と換地の評価が釣り合うようにするために、過不足がある部分を清算金として持ち主から徴収するか、逆に持ち主に交付されることがあります。この清算金がある場合には、相続税を申告するにあたっての土地の評価のなかで考慮して、増額や減額をすることにもなっています。
なお、仮換地の指定があったからといって、すべての場合について、仮換地のほうの評価が適用されるわけではありません。指定はされたものの、使用収益を開始する日が定められていないため、実質的に自由に利用することができず、しかも仮換地の土地の造成工事が行われていない場合には、従前地のほうの評価が適用されます.