民事でのトラブル
家族や親戚などの身近な人が亡くなった場合には、その人が生前に持っていた財産は、民法と呼ばれる法律の規定にしたがって、配偶者や子、父母、兄弟姉妹などの血縁関係がある人に受け継がれることになります。これが相続のしくみですが、相続人が一人だけしかいないということは実際問題としてはほとんどなく、複数の人が相続人となっているのが普通です。この場合、複数の相続人の共有財産としておくこともできますが、管理や処分の都合を考えれば、相続人のなかの誰がどの遺産を相続するのかを明確に決めておいて、それぞれに分割してしまったほうがよほど便利といえます。
そこで相続人となっている人たち全員が一堂に会して話し合いを行い、遺産を分割することを決定して、その結果をまとめたものが遺産分割協議書と呼ばれる書類になります。この書類は相続人全員で合意した内容をあとから確認できるようにして、口約束だけの無用のトラブルを防止するために必要になってくるものです。こうした本来の目的のほかにも、たとえば遺産のなかに土地や建物などの不動産や自動車が含まれていた場合に、別の意味で必要になってくることがあります。
不動産や自動車は高額なため、相続によって名義を亡くなった人から新しい所有者に変更する場合には、その手続が慎重でなければならないのはいうまでもありません。そこで名義変更の手続を取り扱っている法務局や運輸支局では、たしかに遺産分割協議で相続人全員が合意したことを証明するための証拠書類の提出を申請者に対して求めることになっています。その証拠書類こそがここでいう遺産分割協議書であり、特に不動産の場合には書類上に署名捺印した人の印鑑登録証明書などもあわせて添付することを求められます。このように具体的な名義変更のための手続をする上でも遺産分割協議書は重要な役割を担っています。
文面については法律上の明確な決まりごとがあるわけではありませんが、一般には協議によって合意した旨とともに、協議をした日付や合意をした具体的な内容を記載し、さらに相続人全員で署名捺印をしておくことになります。特に所有権移転登記などの手続において有効に機能させるためには、たとえば遺産分割をする土地の所在と用途および地積、建物であれば所在と種類、構造、床面積といった具体的にその物件を特定できる内容と、取得した人の住所や氏名などがもれなく記載されていることが必要です。あいまいで客観的に理解ができないような内容では手続が進まなくなってしまうことがあるのはいうまでもありません。
ただし遺産分割協議書のように法律上も重要となる書類を知識や経験のない人がいきなり作成することは難しいのも事実です。そこで自力で作成ができない場合には、弁護士のように法律問題にくわしい専門家に依頼をして、代わりに文面を作成してもらうことも可能です。
書類を作成する
この書類を作成するプロセスとしては、まずは遺産の範囲と相続人の資格を持っている人とを特定した上で、期日を定めて協議をし、その内容を文章にまとめるとともに、あわせて印鑑登録証明書などのその他の手続上必要な書類まで収集するといった、いくつかの段階を経ることになります。それぞれ手間と時間がかかるのは当然ですが、そのようなプロセスの段取りを弁護士に依頼することができますので、いざというときにもあわてずに済みます。
もちろん弁護士に依頼をする場合、所定の報酬や交付手数料などの実費相当の金額は支払う必要があります。そこでいったん事務所で依頼内容について相談をした上で、どの程度の金額がかかるのか見積もりをしてもらい、その金額に納得ができれば正式に依頼をする方法をとるのが適当です。