相続の際の手続き
相続の際には様々な手続きを行わなければいけません。例えば、被相続人の死亡届のような公的な手続きから、戸籍謄本等による相続人の調査、遺産の範囲と評価額の確定、遺産分割協議など一般的な手続きのほか、死亡保険金の請求や相続放棄の申述、遺留分減殺請求といった手続きが必要となります。相続税の確定申告はこれらの手続きを終えた後に行う必要がありますが、確定申告は被相続人の死亡を知った日(相続が開始した日)の翌日から10ヶ月を経過する日が期限であり、その期限を過ぎると様々な問題が生じてしまいます。
代表的な問題は、期限後申告による追徴課税です。他の税金と同様に、相続税でも申告期限を過ぎてから申告をすると、本来の税額とは別に無申告加算税という税金が課されますし、それが悪質と認められる場合は重加算税が課されます。それぞれの税率は、前者が税額の15%(50万円以上の部分は20%)、後者が税額の40%となります。なお、前者の場合、税務調査を受ける前に期限後申告をすれば5%に軽減されますが、税務調査の通知を受け更正・決定を予知した上で申告をした場合は10%(50万円以上の部分は15%)となります。さらに過去5年以内に、更正・決定の予知をした場合の無申告加算税や重加算税を課されていた場合は10%が加算されますので注意して下さい。
特例についても考慮する
その他に注意したい問題が、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の特例です。いずれの特例も申告期限までに遺産分割が完了している事、確定申告書を提出している事が要件となりますが、申告書の提出とは期限内、期限後、あるいは修正申告(更正の請求は配偶者の税額軽減のみ適用)を指す為、期限後申告であっても申告期限までに遺産分割が完了していれば適用する事ができます。つまり、これらの特例を適用すると相続税が掛からないからと言って申告書の提出を怠り、税務署から指摘を受けた場合であっても、その後の申告時に必要な書類を提出すれば適用できます。
なお、申告期限までに遺産分割が完了していない場合は、確定申告書に申告期限後3年以内の分割見込書を添付します。そして、その期間内に遺産分割が完了し、かつ分割が行われた日の翌日から4ヵ月を経過する日までに更正の請求を行えば適用する事ができます。もし、裁判などやむを得ない事由によって分割が完了しない時は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過するまでに、やむを得ない事由がある旨の承認申請書を提出して承認を受けます。その後、判決の確定日などの翌日から4ヵ月を経過する日までに遺産分割が行われた時に特例を適用できます。
このように、期限後申告をする事は煩雑な問題を生じさせる原因となる為、期限内に申告する事が重要です。しかし、遺産分割は相続人全員の合意が無ければ成立しない為、どうしても手続きに時間が掛かってしまいます。その為、できるだけスムーズな遺産分割協議を心がけ、特例を適用する為に必要な手続きを行う事を忘れないように注意すると良いでしょう。